子宮筋腫

子宮筋腫とは?

子宮にできた筋肉のコブ(平滑筋腫)のことを子宮筋腫といいます。良性の疾患です。
子宮筋腫は成人女性の4~5人に1人はあると考えられています。筋腫ができる原因はいまのところはっきりしていませんが、それが大きくなるのには女性ホルモンのエストロゲンの影響があるといわれています。
子宮筋腫はどの方向に育っていくかによって3種類に分けられます。一番多いのが子宮の筋肉の中で筋腫が大きくなっていく『筋層内筋腫』、次が子宮の外側に向かって成長する『しょう膜下筋腫』、そして子宮の内側に向かって発育する『粘膜下筋腫』です。

子宮筋腫の自覚症状は?

・月経量の増加(過多月経といいます)
・月経が何日も続く(遷延月経といいます)
・月経痛(鎮痛剤を相当量飲む必要があり、月経困難症といいます)
・月経以外の出血(不正性器出血です)
・貧血症状(たちくらみ、動悸、息切れ、疲れやすいなど)
・頻尿(トイレが近い)(大きな筋腫による、膀胱の圧迫で生じます)
・おなかの膨満感(大きな筋腫で小腸、大腸などが圧迫されて生じます)
などがあります。
できた場所によって症状はまちまちです。
若い人では、妊娠しにくくなったり、流産しやすくなったりすることもあります。

診断方法は?

外来での一般的な診察と超音波検査によって簡便に診断できます。
大きな筋腫や手術を考える場合にはMRI検査をすることもあります。

 

大きな筋腫ではまれに悪性の子宮肉腫である場合があります。子宮肉腫と子宮筋腫を見分けることは難しいです。一般に、3ヶ月くらいの間隔で急に大きくなる事が子宮肉腫の疑いを持つ初めの一歩です。MRI検査で筋腫か否かの見当をつけ、要すればPEF-CTを行いますが、治療前に子宮肉腫を判断することは難しいのです。

どのような治療法がありますか?

一般的には子宮筋腫があっても、症状がそれほど強くなく、筋腫の大きさが手の拳以下(ニワトリの卵を4個集めたくらいの大きさ:250~300g)程度であれば定期的な経過観察だけでよいと考えられています。しかし、自覚症状が強い、または大きい場合には治療が必要です。
治療法には、主に『手術』と『薬物療法』があります。

 

『手術』には、筋腫だけを取り除く『筋腫核出術』と子宮を筋腫と共にまるごととってしまう『子宮全摘出術』があります。大きさや症状、年齢、妊娠を希望するか否かなどを考慮しながらどちらの手術をするか決めます。また、腹腔鏡で手術をするか、開腹でするかを決めることになります。
手術療法を検討しなければならない場合には、専門の医療機関をご紹介します。

 

『薬物療法』は、女性ホルモン(エストロゲン)を低下させることで子宮筋腫を縮小し、また、さまざまな症状を軽減するために行います。手術を選択する場合でも、手術前に筋腫の大きさを縮小させることで手術を行いやすくする目的で実施する場合もあります。
ただし、女性ホルモンを抑える作用があることから、更年期障害のような症状(のぼせ、ほてり、イライラなど)がみられることもあります。エストロゲンを含むホルモン剤を使用する治療では、時に骨盤や足の静脈に血栓ができ、それによる重篤な合併症(足の浮腫、痛み、それによる肺塞栓など)が出現する事もあります。ホルモン療法を始める前には禁煙が必要ですし、肥満に注意しなければなりません。一般に半年間位の治療では、重い合併症は少ないので安心してください。ただし、投与を中止すると、また症状がぶり返したり、筋腫が前の大きさに戻ったりする事が多いです。

 

その他の治療法として、超音波により筋腫を小さくする治療(集束超音波治療)や子宮を栄養する血管をつめてしまう治療(子宮動脈塞栓術)がありますが、各々に特有の合併症もあり、実施施設はかぎられています。