子宮がん

子宮頸がん検診を受けましょう!

子宮頸がんは高リスク型HPV(ヒトパピローマウイルス)の持続的な感染により発生する疾患です。検診を受けることによって早期発見、早期治療で治癒する可能性の高い病気です。また、検診によって子宮頸がんの前の状態(前癌病変)を発見し、経過観察(慎重な待機的治療)あるいは積極的な早期治療で克服できます。
子宮頸がん検診を受けましょう!(保険診療でできます)

子宮がん検診って何をするの?

まず、問診票に必要事項を記入して頂きます。
ご自身の健康状態、今までにかかった病気があるかないか、現在通院している病気、状態があるかについて、またご家族に病気があるかなどを問診票に記入して頂きます。もちろん初めて月経を迎えた歳(初経年齢)、現在の月経周期(月経1日目から次の月経までの日にちのことです)、月経の持続日数、最終月経の日にちも必要です。月経に伴う症状、月経に関係ないと思っていることでも何でも記入してください。
その上で、診察室で問診を受けて頂きます。
次に婦人科的な診察を行います。内診室で腹部、外陰部の視診、内診にて子宮頚部から専用のブラシで細胞を採取します。これが細胞診です。細胞診はがんをスクリーニングするための大切な検査です。そして双手診(例えば、左手の指を内診指として腟へ挿入し、右手でおなかから子宮等を腟方向に圧迫しながら診察する方法)で子宮の大きさ、硬さ、動きなど、また卵巣が腫れていないかなどを診ます。さらに経腟超音波検査を行ない、子宮、卵巣の大きさ、異常の有無を確認します。経腟超音波検査では内診でわからない小さな子宮筋腫や卵巣嚢腫などを見つけることができます。また、骨盤内全体の様子(腹水があるかなど)をみることができます。
性交経験がない場合は、腟ではなく直腸内に超音波の端子を挿入して検査(経直腸超音波検査)します。これが簡単な手順です。

 

子宮がん検診は内診により子宮頸部から細胞を採取し細胞診を行うスクリーニング検査ですが、婦人科を受診して診察を受けることによりがん検診のみならず、婦人科的に心配なことは何でも相談できますし、子宮がん検診以外に異常を見つけることができます。
また、不正出血があり、子宮頸がんより子宮体がんが疑われる場合には、そのための検査(子宮内膜細胞診)をお勧めすることがあります。

子宮がん検診の結果はどのように示されるのでしょうか?

子宮がん検診では、子宮腟部と頸管部からサイトブラシやヘラや小綿棒などで細胞をこすり取って検査します。
子宮がん検診の結果は現在、日本母性保護産婦人科医会(日母)の5段階による分類とベセスダシステムによる評価の両方を併記するかたちがとられています。 日母方式ではクラスⅠ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ、Ⅴに分類され、クラスⅢ、クラスⅣ、クラスⅤは細胞診で異常な細胞の存在を示すものです。細胞診でクラスⅢ以上の場合精密検査が必要です。 ベセスダシステムでは標本としての適否、総括診断、記述診断の3つのパートで示されます。 まず、標本として適正か不適正かが判定されます。細胞診の採取状況が悪いと不適正と判定されます。適正な標本について総括診断で「正常範囲内」、「良性細胞変化」、「上皮細胞異常」のいずれであるかを判定します。細胞診の結果を従来のクラス分類と併記した表を示しますのでご参照ください。

 細胞診結果:扁平上皮系

結果 略語 日母方式のクラス分類 推定される病変
1)陰性 NILM Ⅰ Ⅱ  非腫瘍性所見、炎症

2)意義不明な

異型扁平上皮細胞

ASC-US Ⅱ-Ⅲa 軽度扁平上皮内病変疑い

3)HSILを除外できない

異型扁平上皮細胞

ASC-H Ⅲa-b 高度扁平上皮内病変疑い
4)軽度扁平上皮内病変 LSIL Ⅲa HPV感染、軽度異形成
5)高度扁平上皮内病変 HSIL

Ⅲa

Ⅲb

中等度異形成

高度異形成

上皮内癌

6)扁平上皮癌 SCC 扁平上皮癌

 細胞診結果:腺系

結果 略語 日母方式のクラス分類 推定される病変
7)異型腺細胞 AGC 腺異型または腺癌疑い

8)上皮内腺癌

AIS 上皮内腺癌

9)腺癌

Adenocarcinoma 腺癌
10)その他の悪性腫瘍 Other malig. その他の悪性腫瘍

 

子宮頸がん検診の結果、要精査と言われたら恐がらずに精密検査を受けましょう!

子宮頸部細胞診の結果はあくまでスクリーニング検査であって確定診断でないばかりか、がんでない異常も広く含んでいるので、細胞診で要精査と言われたら恐れず健診結果を持って婦人科を受診しましょう。
婦人科では健診の時の状態を伺います。例えば、細胞診は婦人科的診察で行われたか、自己採取だったか?月経時期にかかっていたが、妊娠中でなかったかなどです。
自己採取では腟内に落下した細胞を拾っている可能性が高く正確に頸部から細胞を採取できなかった可能性が高いので適切な評価が不能です。そのため細胞診のやり直しを行ないます。また月経中は血液が混入して十分な細胞採取が行われなかったり、子宮内膜の剥離した細胞を悪く評価したりなどの誤りも生じます。妊娠中も子宮頸部から出血しやすいために十分細胞が取られていない場合や、妊娠に伴う子宮頸部細胞の増殖過多などから細胞診がより悪く判定されることがあります。
細胞診の結果を評価した上でASC-US以上の方が精密検査の対象です。
細胞診でASC-H、LSIL、HSIL、SCCという結果が出たら、軽度異形成以上の病変が疑われるので子宮腟部拡大鏡検査(コルポスコピー)および危しい部位を見ながら米粒大以下の小片で組織を切り取る生検による精密検査が必要です。

 

ASC-USの場合も精密検査が必要ですが、いくつかの選択肢があります。現在HPV(ヒトパピローマウイルス)検査が保険適用を受けているので①HPV検査による判定が望ましいとされています。その結果、陰性であれば1年後に細胞診再検ならびにHPV検査が推奨されます。陽性ならコルポスコピーおよび生検による精密検査を行います。②HPV検査を行わない場合、6か月以内に細胞診検査が勧められます。③HPV検査を行わないでただちにコルポスコピー、生検を行うことも容認されます。
HPV検出ならびに、ハイリスクHPVの型まで含めた検査を行うことは将来的な子宮頸がん発症のリスクを知る上で参考になりますが、日本の検診システム(細胞診→要すれば組織診)は世界で最高レベルなので、HPV検査のコスト・ベネフィットについては問題があるとの見解も多いのです。

子宮頸部異形成ってなにものでしょう?

子宮頸部の細胞に変化が起きてまず異形成という細胞になりますが、異形成には軽度、中等度、高度の3段階があります。異形成は大きな意味で前癌病変ですが、軽度異形成は多くの場合自然に治ります(70%は治ります) 中等度異形成でも約50%は治ると考えられます。しかし、高度異形成では治る確率は相当に低く、高度異形成と0期の子宮頸がん(上皮内がん)との区別は必ずしも容易ではありませんので、これから妊娠希望があるという場合は早めの治療(子宮頸部円錐切除術)が望ましいと言われています。出産後や挙児希望の特にない場合、0期のがんになってから治療を受けるという選択も許されますし、0期のがんが一人前の子宮頸がんになるのには数年を要することが普通なので、手術時期についても患者さんの希望に合わせて選択することもあります。
検診の目安は軽度異形成の場合、6か月ごとの細胞診と必要に応じたコルポスコピーと言われています。中等度異形成の場合は3~6か月ごとの細胞診とコルポスコピーが推奨されます。

 

さて子宮頸部異形成はなぜ自然に治るのでしょうか。子宮頸部のパンチ生検をした後の部位では、盛んに壊れた組織の修復が行われます。その部位では修復細胞と共にリンパ球などの免疫細胞も集まります。これらが感染しているHPVを壊すなどしてくれれば、組織の修復と病気の治療が同時進行することになります。
一般に2年間に4回(半年毎)のパンチ生検を反復すると、軽度異形成の70%、中等度異形成の50%は治ると思われます。
子宮頸部異形成が2年経っても治らない場合や、明らかに上皮内がんではない高度異形成の場合にはレーザー蒸散治療を行うことができます。これは子宮頸部円錐切除より子宮頸部への負担が少なく安全であり、通常外来治療ができます。当クリニックには炭酸ガスレーザー(LASERY 20Z)を導入していてこの治療が可能です。

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